スチュアートダンカン ワークショップ

先日、スチュアートダンカンというフィドラーのワークショップに参加しました。

フィドルというのは、アメリカのカントリー、ブルーグラスなどのジャンルで使われるバイオリンの事なのですが、ほぼ同じ楽器を使っても随分とその演奏のニュアンスは異なります。

特にクラシックで音楽を勉強したことのある人にとっては、音が汚い、音程が悪いなど、あまり良いイメージを持たれないことが多いフィドルですが、最近ではこれらのルーツミュージックも随分と洗練されて、より多くの人達に耳馴染みの良いものになったと思います。アリソン・クラウスなどは僕も普段から移動の時などによく聞きますし、テイラー・スイフトもカントリー出身ですが大ブレイクしてますね。

とはいえ僕自身も、ブルーグラスのフィドルは格好いいなと思いつつ、いまいち取っ付きにくいと感じていたのですが、数年前にゴートロデオセッションでのスチュアートダンカンの洗練された演奏を聴いて以来、そのイメージは一変してしまいました。

今回はそのスチュアートダンカンがダイアナクラールのサポートで来日するとの事で、コンサートも是非行きたかったのですが、スチュアートが来ることを知った時にはもうチケットはソールドアウト、とても悔しく思っていました。ところが、その空き日にワークショップを開催するとの事!本来ならば自宅で子守をしなければいけない日だったのですが、大変貴重な機会という事で、無理を言って子連れで参加させてもらいました(主催者や他の参加者の方々にはご迷惑をおかけして申し訳無かったです)。

ワークショップはとても和気藹々とした雰囲気で、軽くセッションなども行われ、僕も息子を抱っこしたまま参加させてもらいました(苦笑)が、なんといってもスチュアートの生の音を聴けたのは大変な収穫でした。彼は3T(timing, taste, tone)とp(pitch)が大切と言ってましたが、そのハイレベルな3T&Pは本当に凄いというか、ただただ心地良い音がそこにありました。

彼が言う3T&Pの中でも僕が特に感銘を受けたのはPitchの部分でした。ブルーグラスのフィドルは音程が悪いと言われることが多いのですが、少なくともスチュアートに関してはそれは間違っていて、ペンタトニックスケールの音程の取り方が12平均律に適合しないという事が理解されていないだけなのです。事実、彼はワークショップの中でもアパラチア色の強いフレーズや、マイナーでもメジャーでもない3度の取り方などを楽しんでいました。ブルースなど、アメリカのルーツミュージックにおいても、このクォータートーンのコントロールが、テイストを表現するのに大変重要な要素となります。12平均律に適合しないクォータートーンは現代のポップスなどでは嫌われることが多いのですが、それは音程が悪いのではありません。12平均律で音楽を学んだ人達よりももっと高い解像度でピッチをコントロールしているという事が、早く多くのプレイヤーに理解されると良いなと思います。

さて1歳と7ヶ月でそんなマニアックな世界に強制連行された可哀想な息子は、翌日には子供らしく、ママと一緒に「ポコポッテイト(おかあさんといっしょ)」のコンサートに行きましたとさ!良かった良かった!

stuartduncan

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>